こちらでは離婚調停に必要な陳述書の書き方について解説していきます。陳述書の書き方に形式はありませんが、文章力は必要です。
フリーランスの現役ライターである私が、実際に書いた陳述書をもとに解説していきますので、是非とも参考にされて下さい。
目次
陳述書はワードファイルなどのパソコンで作成しよう
まず初めに陳述書に手書きはオススメしません。と言うのも内容が濃い文章になる為、よほど自筆の綺麗さに自信がある方以外は、調停員や相手方が読みやすいようプリントアウトできる形が望ましいからです。
パソコンを持っていなければスマホでも作成は可能です。
上記のようにワードファイルを作成できるアプリもありますので、それを使って陳述書を作成し、プリントアウトして持ち込みましょう。
尚、陳述書は必須ではありませんが、調停の申し立ての手続きの際に渡しておくことも可能です。(向こうから提出は求められません)
第一回目の調停から、調停員に事情を理解しておいてもらいたい、という方は、申し立ての際に受付で各種書類と一緒に提出しておけば時間短縮になります。
申し立ての際に間に合わなくても、第一回の調停までには必ず間に合わせましょう。
陳述書の目的
陳述書は調停員の方に事情を理解してもらうために提出する物ですが、まず大事なポイントとして、下記を認識しておきましょう。
- 陳述書は自身の要求とそれに至った経緯を伝えるもの
- 陳述書は愚痴を書く物ではない
- 陳述書は感情よりも事実が大切
- 陳述書と証拠資料は別で用意する
陳述書でありがちなのが、ご自身の辛かった経験や経緯などを感情に任せて書いてしまい、要点がボケてしまう事です。
経緯やその時々の背景・事情の記述は必要ですが、決して恨みつらみや愚痴を書いてはいけません。それは、調停員に『理屈が通じない感情的な人』というマイナスイメージを与えてしまいます。
あくまでも事実を分かりやすく伝える事が大切です。
感情面は口頭で
ですが、離婚調停において、どれだけあなたが苦しんだかを伝える事も必要です。それは、調停に至る背景を調停員が陳述書を読み込んだ後、『実際にあった出来事』を理解した上で、口頭で伝える方が理解・共感を得られやすいです。
調停員は事情を知らない赤の他人です。出来る限り冷静に、丁寧にを心掛けた上で、感情面を訴えましょう。
陳述書の書き方1.フォーマット
では、実際に陳述書を書く上でのフォーマットを解説していきます。
ページ数は多くてもA4用紙4~5枚まで
まず、陳述書に書く総量ですが、多くてもA4用紙5枚までを意識しましょう。それ以上となると文量が多すぎて調停員の理解が追いつかなくなります。
また、冗長になればなるほど、文章の要点がブレます。書き方のコツは後述しますが、極力一つの文章を短く削る方が調停員が読みやすいし、事情を理解してもらえる、という事は覚えておいて下さい。
陳述書は出来れば4セット用意しよう
書き終わってからでOKですが、陳述書のプリントアウトは4セット用意しておきましょう。
自分用、調停員用(男女1名づつ)、相手方に渡す用の計4セットです。
最初から4セット用意しておくことで、調停員に気配りが出来る人という印象を与えられる可能性はあります。
勿論、1セットでも大丈夫です。
陳述書の書き方2.まずは見出しから埋める
まずは大枠となる見出しから書いていきましょう。実際に私が書いた陳述書は下記の通りです。
- タイトル・署名
- 要求の整理
- 争点の整理
- 婚姻期間と生活実態
- 離婚に至る経緯
- 主張・まとめ
上記の見出しを書き出してから、中身を埋めていく順番が良いでしょう。
下記に例文を添えてありますので、文章が苦手な方は、例文(青字)を一度ワードファイルにコピペしてみて、自分用に内容を書き換える形が簡単です。
タイトル・記名の書き方
タイトルはそのまま、『陳述書』でOKです。表紙などを付ける必要もありません。Word等の文章作成ソフトで作る際は、見やすいよう文字の大きさやフォントを整えて下さい。
タイトルの下に、提出する日付と裁判所名、自分の氏名・年齢・住所・職業を記載します。
見出し1.要求の整理
続けて本文に入っていきますが、まず冒頭に何を求めて調停をしているのか、箇条書きで記載しましょう。戸籍上の問題、財産分与の問題、慰謝料の問題、親権の問題など、自身の要求を最初に記載して下さい。
■1.離婚調停で妻へ求めること
• 離婚届提出への合意
• 住民票の速やかな移動
• 争点であるマンション(私が居住)の財産分与額を決め名義を私へ移すこと
以上の3点です。
この際、注意したいのは、調停は裁判ではないという事と、要求の相手はあくまでも相手方(夫・妻)であると言う点です。
調停員に対して、『相手が〇〇をしてくれなくて……何とかして下さい!!』といった要求は完全に筋違いなので、注意しましょう。
見出し2.争点の整理
次に、相手方と合意が出来ている点、出来ていない点を整理し、調停で何を決めたいのか記述しましょう。
また、この際補足となる資料や事実説明が必要であれば、箇条書きにて整理しておくのが見やすい形です。
■2.争点について
現在、双方ともに婚姻継続の意思はなく、離婚には妻も同意するものと考えております。しかし、共同名義である自宅の割譲について金額面で折り合いが付かず、その一点において調停で合意するかが争点です。
〇自宅に関する補足
• 1/2の私と妻の共同名義
• 中古売却をした場合の現在価値は添付資料A参照
• 購入時の資金については添付資料B参照
• 登記簿は妻が別居時に無断で持ち出した為、私は不保持
• ローンの支払いは全て婚姻期間中の共有財産より
ここでは、自宅に関する財産分与の例文を出しましたが、浮気であればこちらの要求と相手方の主張の何がズレているのか、不貞行為を認めていないのか、離婚をしたくないのか、それとも慰謝料の金額でもめているのか等々の争点について書きましょう。
また、争点が多い場合には、無理に文章にせず、箇条書きにするのがベストです。
見出し3.婚姻期間と生活実態
ここでは、婚姻期間とその実態を伝えましょう。
婚姻期間を書く
婚姻期間は、財産分与等のお金に大きく関わる部分ですので、必ず記載しておきましょう。入籍日を忘れてしまった場合は戸籍謄本を取れば記載されています。
『婚姻期間は別紙参照』と記述して資料として戸籍謄本のコピーを陳述書とは別に添付してもOKです。
また、戸籍謄本は和暦(昭和・平成・令和)で書かれていますが、和暦をまたがる際は、婚姻期間が分かりやすいように西暦で記述するのが無難です。
生活実態について
ここは、離婚に至った原因ではなく、その前フリの整理です、これまでどんな婚姻生活をしてきたかの整理です。
仕事に関わるライフスタイルや家事の分担、家計の分担、預貯金の管理、休日の過ごし方等々、あくまでもフェアな観点から婚姻生活の実態がどのような形だったのか、事実を述べて下さい。
■3.これまでの婚姻生活について
〇婚姻期間
• 2010年8月21日~ 現在8年と6か月(102か月)
〇これまでの生活状況
妻とは婚姻生活において家計を特定の口座へ毎月お互い決められた金額を振り込み、生活費にあてると婚姻時に決めていた。口座の通帳・カードの管理は妻がしていた。
家事の分担は特に取り決めていなかったが、お互いに手が空いた時にやる形で特にこれまで不満はなかった。
生活が変化したのは妻が仕事を変えてから。妻の収入が減った為、生活費の増額を要求されそれに応じたが、その頃から以前に比べて服飾品の購入が多くなったことが気になり通帳を見せて欲しいと要求したところ、頑なに拒否された為、不信感を覚えるようになった。
離婚問題においては、何らかの問題がスタートした起点が必ずあるはずです。ピンポイントの日時は必要ありませんので、以前と何が変わったのか、問題発生時点までの経緯を振り返る形を取りましょう。
見出し4.離婚調停に至る経緯
陳述書の核となる部分がここです。ここまで一体何があって、どのような問題が発生したのかを書きます。
自身の要求の根拠となる部分ですので、ご自身の状況をしっかりと振り返って下さい。
その上で、下記のポイントを押さえておきましょう。
- 法律上の有責事項を最優先に書く
- 有責か微妙な事も書くべきだが、なるべく簡潔に
- 長くなる部分なので、文章力に自信が無ければ箇条書きがベスト
- まずは思いあたる重要な出来事を全て羅列
- その際、時系列通りに並べ直す
- 日付が分かるものは明記する
- 経緯の後に重要な資料があれば記載するか別途資料を添付する
- 相手方に関わる事はあくまでも行動事実を述べる
- 自身の心情の変化などは素直に書いてOK
調停までの経緯は箇条書きがベスト
問題発生から離婚調停に至るまでの経緯というのは、良い意味でも悪い意味でも人によって本当にドラマがあります。
その為、フォーマットが決められていない陳述書では、どうしてもこの部分が膨らみがちですが、私たちは脚本家でも文筆家でもありません。
あくまでも時系列に沿って、何があったかを客観的に分かる形でまとめなければなりませんので、最も書きやすく読みやすいのは箇条書きです。時系列に沿う形で、何があったのかを順番に書いていきましょう。
また、日付がハッキリしている出来事については、必ず年月日を添えて書きましょう。
経緯をまとめる事は、辛かった事を思い出す作業になりますから、最初からキレイにまとめようなんて思わなくてOKです。まずは箇条書きでありのままを一度吐き出して、その後少し時間を置いてから見直し、時系列を並べ直したり、感情が行き過ぎた表現になっているのを添削したりするのが効果的です。
有責事項の記述が最優先
陳述書は相手への要求を調停員に理解してもらう物ですが、その根拠となる部分はあくまでも法律論に基づいた物でなければいけません。
こちらの要求にどのような根拠があり、根拠が妥当なのかどうかをここで示さなければなりません。
担当の弁護士さんがいる方は、書き上げた陳述書を事前にチェックしてもらいましょう。
あくまでも自分で戦いたい、という方は下記記事にて離婚における有責事項をまずは把握し、自分の要求に筋が通っているか確認しましょう。

有責か微妙な話も書くべきだが感情論には注意
モラルハラスメントや悪意の遺棄のように、有責認定が中々されづらい微妙な内容もあるはずです。
そういった事例については堂々と主張すべきですが、その際に感情を込めすぎると調停員が一歩引いて見てしまうのでオススメできません。
あくまでも実際にあった事実を羅列していく方が効果的です。
書き方例:相手方は行動の事実のみを書き、自分の感情は素直に書く
一つ書き方の例を出しますが
- 怒った夫が机を思い切り叩いて、私を威嚇し~~~
- 怒った夫が机を思い切り叩いて、私は大きな恐怖を感じ~~~
一見同じような書き方ですが、正解は後者です。前者は“威嚇した”という相手の行動に私情が入ってしまっています。後者は自身がどう感じたかを述べています。
調停では、大変残念ながら相手方は弁護士を含めて交渉を有利に進める為ならウソも織り交ぜてきます。“威嚇した”という表現はあくまで自分がそう感じたこと。相手がそんなつもりは無かったと言えばそれまでで、どちらの言い分が正しいのか、調停員は判断のしようがありません。
ですので、事実と自分がどう感じたかにフォーカスすべきで、相手方の行動を装飾してはいけません。
その方が確実に当時の状況を調停員に伝えやすくなります。
見出し5.主張・まとめ
調停に至る経緯をまとめたら、最後はそれを踏まえた上での主張です。
相手方にどのような非があったのか、それによって何の有責事項にあたるのか。モラハラや悪意の遺棄のような曖昧な案件については、ある程度強引に断定調でも構いません。あくまで自身の見方を主張しましょう。
その上で、最終的な相手方への要求を整理します。
■5.当方の主張
家計に関してはA(夫・妻)の仕事環境の変化は理解してきたが、不貞行為については許しがたいものだった。また、離婚条件に関して出来る限り判例に基づいた主張を行ってきたが、妻はそれを認めず協議離婚は不可能と感じ、やむなく離婚調停に至った。
前項を含む経緯を踏まえ
• Aには不貞行為があった
• Aの度重なる深夜外出による家事・育児の放棄は夫婦の扶助義務を果たさないもので悪意の遺棄に該当する
• Aの深夜外出や暴言・無視は精神的迫害でありモラルハラスメントに該当する
とした上で下記をAへ要求する。
1. 慰謝料として〇〇〇万円を請求する
2. 共同名義であるマンションの中古価値を分割、残債を差し引き、上記慰謝料と相殺した金額を現金一括にてAへ支払う。
3. 年金や預貯金、生命保険などの余財についてはそれぞれの名義のものを保持し請求権の一切を双方が放棄する
4. 以上を条件に財産分与額の合意と調停調書の作成、マンション登記簿の返却、マンションの名義変更ならびに、住民票の移動を妻へ求めるものとする
最後にこのような私的なことでご迷惑をおかけしてしまうこと、深くお詫び致します。以上をもって陳述書と致します。
〇〇〇〇(署名)
ここまでの文例は、私が実際に書いた部分の抜粋に少しフェイクを入れています。
本来ならばもう少し簡潔でも良いくらいですが、こちらからの条件提示がある際には、詳細まで書いていた方が『きちんと考えている・法律を常識的な範囲で理解している』と調停員が判断してくれます。
それにより、その他の項目に関しても主張に偽りが無い、しっかりしているという印象を与えますので、まとめ部分は大切です。
あくまでもこれは一つの事例 100%鵜呑みにしない
ここまで長々と書かせてもらいましたが、あくまでもこの書き方は私のケースにおいての成功例の一つにしかすぎません。
離婚調停の内容は十人十色で、これが必ず正解という形もありません。決してこのフォーマットを鵜呑みにしないでください。
あくまでもあなたのケースに沿った形で仕上げる事が大切です。また、そうした方があなたの気持ちが確実に文章に乗ります。
陳述書の書き方 まとめ
大原則として、陳述書は調停員への事情説明書であって、調停員はカウンセラーでもなければ裁判官でもありません。
あくまでも双方の意見を取りまとめて相手方に伝える役割であり、それ以上の事を望むのは筋違いです。
ただ、調停員も人間です。
どちらに非があるのか、どちらの主張が信用出来て、どちらがウソをついているのかは、必ず見ていますし、それによって双方との話し方やアドバイスも変わります。
調停員も両方を見ながら、和解の道筋をどう作っていけばいいか、考えているのです。
調停のような短い時間で、口頭で夫婦にあった出来事の全てを調停員に理解してもらうことなど不可能です。
だからこそ、陳述書は大切なのです。努めて冷静に、かつ丁寧に。ご自身が望む結果を得られるよう、陳述書は出来る限り丁寧に作る事をオススメします。
実際に体験した陳述書の力
ここからは体験談になりますので、あくまでも参考程度に捉えて下さい。
私は上記のように陳述書を作成し、そこには多くの時間をかけました。ただ、やはり書いていてそれほど気持ちの良いものではなく、自分で見返しては凹むような事も多々ありました。
私が陳述書を提出したのは第一回の調停時だったのですが、第二回の調停時に明らかに調停員の態度が変わっていたのが印象的でした。
財産分与の解釈について、かなりこちらの主張に寄ってくれていたのです。
調停に臨む前にイメージしていたのは主にネット上で見られる常識的な話で
- 過去の判例や常識的な判断では何よりも物的証拠が無ければ不利
- 夫婦の共有財産は生活態度や稼ぎの多少に関わらず原則として1/2
- その上で慰謝料や財産分与は事務的に判断される
いくら陳述書を作りこんだところで、上記のようなドライな対応をされるものと思っていました。また、物的証拠が弱い自分の場合、現実問題として裁判に持ち込んだら不利だろうな、と感じていました。
しかし、実際の調停時には
- 財産分与の金額について、調停員が判例ではなく生活実態に基づいた計算をしてくれた
- こちらの感情面にも理解を示してくれた
このような状況でした。その時の詳細はこちらをご覧ください。
これは私も正直意外で、その変化が第二回からだった事を考えると、確実に陳述書によって正確な状況を理解してくれたのだと確信しています。
また、それと同時に裁判まで至る事による双方の不利益を相手方に諭してくれたのだとも思います。
本来、そういった形は調停員に求められるものでも無ければ役割でもありません。私がたまたまそういった方に担当してもらっただけだとも思います。ただ、何事もやり切っておくに越したことはありません。
陳述書は調停の場において、何よりも強い武器になり得ます。辛い思いをされた方だからこそ、より良い未来を掴むために、陳述書には力を注いで頂きたいと思います。
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