財産分与における退職金の取り扱い

退職金は、財産分与の対象になるケースとならないケースがあり、それぞれの状況により扱い方が異なります。

退職金が財産分与の対象となるケース

  • すでに退職金が支払われている場合(退職後)
  • 退職金が支払われるのが確実と見込まれるケース(公務員など)

退職金は、給与の後払いという性質を持っている為、基本的には財産分与の対象となります。

その為、すでに退職しており支払い済みの退職金であれば、財産分与の対象となりますし、公務員など終身雇用が保証されている職業であれば、相手方の就業期間の内の婚姻期間の割合に応じて財産分与の対象となります。

以下で詳しく見ていきます。

退職金が支払われているケース

すでに退職済みで退職金が支払われている場合にポイントとなるのは以下の3点です。

  1. 現在残っている金額
  2. 退職金が支給されるまでの勤務年数
  3. 実質的な婚姻期間(同居期間)の年数

上記3点が考慮され、最終的な金額を決める目安とされています。

1.現在残っている金額

すでに退職金が支払われている場合、その後も収入があり、退職金を含む現金・預貯金の総額が増えているような状況であれば、原則として退職金の全額が財産分与の対象となります。

一方、支給された時にあったお金の総額と離婚(別居)時の残高が減っている場合は少し複雑です。

例:退職金が1000万円 支給時の現預金が2000万円 離婚(別居)時の現預金が1500万円の場合

現預金の25%が生活の為に失われており、その中には退職金を使った分も含まれると考えられる為、1000万円×75%の750万円を婚姻期間に応じて分割

上記のような考え方をするのが一般的です。これは、退職金を下回る現預金しかないケースも同様で、支給時残高と現残高との差が考慮されます。

2.退職金が支給されるまでの勤務年数(寄与期間割合)

退職金が支給される会社の規定で、退職金が勤続5年以降でないと支給されないといった規定があるケースではこの点が考慮されます。

具体的に述べると

前提:退職金の支給開始年数は5年 25年で退職 退職金は1年ごとに一律で増える 最終的な支給額は1000万円とする

例1:勤続6年目に婚姻。退職と同時に離婚の場合

このケースでは、退職金が発生し始めている年からの全期間が婚姻期間となる為、退職金の全額を財産分与対象とする考え方が一般的です。

例2:勤続15年目に結婚 退職と同時に離婚の場合

これは、退職金が発生している1/2の10年が婚姻期間にあたりますので総支給額の1000万円の1/2×1/2=250万円が受け取れる額の目安となります。

寄与期間割合算出上の注意

ただし、勤務年数と退職金の算出方法は、会社によって異なり、算出方法を勤務先に開示させるというのは現実的ではありません。その為、退職金が支払われるまでの年数や、退職金算出の係数を詳細に算出できるケースは少なく、勤務年数と婚姻年数の割合で単純分割するやり方が一般的です。

3.実質的な婚姻期間の年数

最もメジャーな退職金の算出方法で、勤務期間の内、婚姻期間が何%かを基準に総額にかけて財産分与額を算出する方法です。

すでに退職金が支払われている場合には、退職金の寄与期間割合に関わらず、この方法で分割される形が一般的です。

退職金がまだ支払われていないケース

退職金がまだ支払われていないものの、公務員などで終身雇用・退職金の支給が確実と見込まれている状況の場合、財産分与の対象となります。

その際の計算方法としては、離婚時点で退職したと仮定した場合に支払われる退職金の総額をベースに、勤務期間と婚姻期間の割合に応じて分割します。

離婚後、定年まで勤めあげてもらえる満額が対象となるわけではありませんので、その点は注意しましょう。

ただ、まだ退職まで数十年ある若年離婚などの場合、いくら終身雇用であっても将来受け取れるかどうかが不確かな状況においては、片方の配偶者にとって不公平であるとして、裁判所が退職金の分割を認めないケースも多く、将来的な退職がすでに決まっているような状況でなければ財産分与は難しいです。

では、年齢がいくつならば、職業が何であれば、といった細かい基準ですが、これは明確になっていない為、財産分与で揉めた場合には、裁判で争ってみなければ分からないというのが実情です。

このケースでは、そもそも現時点での退職金の額が高額になることはほとんどなく、裁判費用をかけてまで争う必要性は薄い為、話し合いで合意点を探るのがベターと言えるでしょう。

共働きの場合

共働きで双方に退職金が支給されるケースでは、双方の支給額を指し引きした上で、退職金を多くもらっている側が、少ない方との差額の1/2(×寄与期間割合)を渡す形が一般的です。

退職金の金額に大きな差があっても、原則として婚姻期間に形成した財産は夫婦それぞれ1/2という考え方になります。

実際の判例は様々

尚、ここまで述べた基準はあくまで一つの考え方であって、実際のところは将来の財政的な不安や、家庭内の寄与度(相互扶助義務に対する貢献度)を始めとした様々なケースに対応して1/2を上回る判例も下回る判例も出ています。

退職金個別ではなく、清算的財産分与・扶養的財産分与・慰謝料的財産分与の全てをトータルで考えるケースが現実的には多い為、「こうでなければおかしい」と決めつけた要求を相手にすることは望ましくありません。

退職金の財産分与は話し合いで決まる

ここまで記載した退職金の財産分与の算出基準は、あくまで指標であって、法律で明確に決められているものではありません。

実際に裁判で争った場合には、過去の判例をもとに事情に合わせてこれらの基準が採用されますが、現実的には双方の話し合いの中で落としどころを探していくケースがほとんどで、合意があればどのような金額で決着しても構いません。

 

退職金が財産分与の対象とならないケース

  • 自営業などでそもそも退職金が無い
  • 若年離婚で退職金支給まで数十年ある
  • 双方が放棄することで合意
  • 著しく家庭生活への寄与割合が低かった

上記のようなケースでは、退職金は財産分与の対象となり得ません。

但し、寄与割合に関しては、明確な基準はなく個別の事情が勘案される為、争点となりやすい部分です。

退職金について、相手方と揉めている場合には、本当に裁判まで行く必要があるのか、自分が納得できる妥協点は無いかを十分考えた上で、弁護士に相談することをオススメします。

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