不貞行為(不倫)と親権の関係

「浮気をされたんだから、子どもの親権はこっちに来て当たり前だ!」

「あんなだらしない夫(妻)に子どもを養育させるなんてあり得ない」

そう憤る気持ちは分かりますが、子どもの親権と不貞行為(浮気)は、原則として切り分けて考えられるケースが多いのが実情で、配偶者の不倫が原因の離婚だからと言って、必ずしも親権を取れるわけではありません。

では、どうすれば子どもの親権を確実に取れるのでしょうか。

ここでは、離婚時の話し合いや調停時に問題となる子どもの親権について解説していきます。

不貞行為と親権の是非は原則として無関係

浮気をされた側の心情からすれば、本当に納得がいかないところですが、不貞行為と親権の是非は原則関係ないものと見られます。

子どもの権利として、より良い環境は父・母のどちらと暮らす事なのかが最も重視されます。

浮気はあくまでも夫婦間の問題であって、子どもには関係ないという点は理解しておかなければなりません。

親権はどうやって決まる?

では、親権はどのように決められているのでしょうか。まず、子どもの年齢的な面から見ていきます。

子どもの年齢と親権の関係性

乳幼児は圧倒的に母親が有利

まだ未就学児である乳幼児については、原則として母親が圧倒的に有利です。これは、幼児の生育には生物学的な観点から、母親の存在が非常に重要と見られている事から、そのような判断をされるケースが多いです。

4~5歳からは状況次第

一方、幼稚園などに就学し、ある程度の意思表示が出来るようになる年齢では、単純に母親だけが優先されることは無くなります。状況別の詳細については後述します。

15歳以上は子どもの意思が優先

子どもの意思が最優先となってくるのが高校生の年代である15歳以上です。この年齢になれば、家庭内の状況について、子ども自身が正確な判断を下せることから、子どもの意思が優先されるケースが圧倒的に増えてきます。

親権を判断する基本的な基準

親権判断の基本原則
  • 現在までの子どもとの関係
  • 育児の負担割合(監護状況)
  • 子どもへの愛着
  • 父母の健康状態
  • 父母の経済力
  • 離婚後の居住環境
  • 現在、子どもと一緒に暮らしているかどうか
  • 離婚後の面会交流についての考え方

前述の年齢的な違い以外では、上記が基本的な親権の判断基準となっています。この中に、貞操観念(不貞行為の有無と子どもの精神状態への影響)といった項目が無いところが落とし穴で、不倫をされた方はそこを主張するのではなく、上記の原則を冷静に判断していく必要があります。

母親が親権を得られなくなるケース

原則として母親側が有利な親権ですが、下記のような事例があると母親も不利になってきます。(男性でも当てはまれば当然不利になります)

親権獲得に不利になる要素
  • 子どもに虐待をしていた
  • 子どもの育児を放棄していた
  • 子どもと別居している
  • 不倫相手と同棲している

虐待や育児放棄をしていた実績がある場合、親権の獲得には非常に不利になります。

また、配偶者からのDVで身の危険があるなど特別な事情が無いのに既に子どもと別居している場合、育児放棄・家庭を放棄しているとみなされる可能性が高くなります。

更に、離婚成立前に子どもと共に不倫相手と同居し、不倫相手を「パパ(ママ)」と呼ばせていたりするのは、子どもへの虐待と取られる可能性があります。

近年、再婚相手が連れ子に対して虐待をするケースが頻発しており、不倫相手と子どもとの不適切な関係があることは親権獲得に不利になります。

現在の親権判断の傾向

森田英樹 弁護士

従前は母性優先の基準が採用されていましたが現在では性別を問わない「主たる監護者」による監護継続の必要性を検討することにより判断されるようになりました。
従来からの監護状況・親族など監護補助者による援助の有無などが親権判断の大きな要素となっています。

ただし 一方の親の監護継続中に他方が無断で連れ去る、面会交流を機に子を返さない等子が奪取した親のもとで安定した生活を送り馴染んだとしてもそれは奪取の結果であって追認しないという判例の姿勢も顕著です。出典:弁護士ドットコム

このように、単純に母親だから、といった理由で親権が判断されることはありません。子どもとの関係性や監護実績も判断基準として大きく関わっています。

判例では圧倒的に母親有利

ただ、実際の判例がどうなっているかを見ると実に9割以上が母親側に親権が認められています。(出典:司法統計

裁判は過去の判例と同じような状況の場合、正反対の判決を下すケースは非常に稀で、いくら現在の時世が監護実績を重視するようになっているとはいえ、裁判までいってしまえば父親が不利であるのは間違いありません。

ですから、親権を取りたい場合、現実的には父親は「調停までに決着すること」が大切となります。一方、母親は「自分の過失を限りなく減らす」ことで、親権を獲得することが出来ると言えるでしょう。

事実、父親が親権を獲得したのは

谷原一憲 弁護士

私がここ最近経験した事案で、夫が親権者となった事案が2件あります。ただし、いずれも離婚調停で終了した事案です。

1件は、子供が男の子2人(いずれも小学生)で、妻が子供を置いて別居し(ただし、妻が育児を放棄したという事情はありません。)、子供らは別居前から夫の方に懐いており、しかも子供らが夫との生活を希望していたという事案です。

もう1件は、子供が女の子1人(小学生)で、妻が子供を置いて別居し(ただし、妻が育児を放棄したという事情はありません。)、子供が夫との生活を希望していたという事案です。

いずれも調停が成立した事案ですから、裁判所が決めたものではありません。共通点は、夫が子供を養育しているという状態が継続していたこと、子供が夫との生活を希望したということです。出典:弁護士ドットコム

このように調停までの決着です。

親権を獲得する為に必要なこと

ここまでの基本的な原則を踏まえた上で、実際に親権を獲得する為にはどうすれば良いのでしょうか。

親権獲得までの流れ

まずは、親権をどのように決めていくかですが、

  1. 双方で話し合い
  2. 離婚調停で話し合い
  3. 裁判

上記の流れで進んでいきます。調停までは双方の話し合いにより決められ、裁判は最終手段です。

前項でも述べましたが、父親は裁判までいってしまえば親権獲得は圧倒的に不利ですので、調停までの間いに何とか相手方を納得させる必要があります。

一方、母親は裁判に持ち込めばよほどの過失が無い限り親権は取れる可能性が高まります。

但し、それらは以下のことを満たした上での話となります。

親権を取る為に証明したい事

親権獲得の為に準備すべきこと
  • 現在までの子どもとの関係が良好であること
  • 育児の負担割合(監護状況)において自身の負担実績が大きいこと
  • 子どもへの愛着の強さを示す
  • 自分の健康状態が良好であることを示す
  • 自分に十分な経済力がある事を示す
  • 離婚後の居住環境が子どもにとって良好であることを示す
  • 子どもと一緒に暮らしている(※但し無理矢理連れ去るのはNG)

父母のどちらであれ、親権獲得の基本原則に沿って、自分が如何に子どもの為になる環境を整えられているか、この先整えることが出来るかを精一杯アピールしなければなりません。

「自分が子どもといたい」

と子どもではなく「自分」を主体にするのはNG。あくまでも子どもにとって良い環境とは何かを考えれば自ずとやるべき事は見えてくるはずです。

物的証拠が残りずらい為、メモや動画・音声データが有効

具体的な証拠集めに関して、親権に関する事柄は物的証拠が残りずらいことが特徴です。その為、日々の生活を詳細に記したメモは必ず残しておきましょう。

また、「子どもとよく遊んでいる姿を目撃されている」「夫(妻)の虐待を見た」「夫(妻)が育児を放棄して遊び歩いている」といった第三者からの証言も重要な証拠となりますので、あらゆる方法で証拠を残しておきましょう。

ウソはNG

当事者同士の話し合いで決着するならともかく、調停・裁判の席ではウソの申告は絶対にNGです。

調停・裁判では、相手方がどのような証拠を提示してくるか分かりません。その際、自分が提示した資料の中にウソが混じっていると判断されれば、子どもの監護者として不適格とみなされ、極めて不利になります。

勿論、全てを馬鹿正直に戦う必要はありませんが、ウソにならないギリギリのラインを素人が見極めるのは難しいので、最終的な係争とそれに至るまでの準備の段階から、プロである弁護士を頼るべきです。

交渉はプロに任せるべき

親権獲得は、夫婦の問題とは別の話になる為、不貞行為の慰謝料や財産分与といったお金の面以上に揉める事が多い案件です。それだけに、裁判も見据えた資料・証拠集めから徹底的に準備する必要があります。

千差万別の家庭環境において「自分が有利な点は何か」「何をアピールすれば良いのか」といったポイントは、第三者の客観的な判断に従うべきです。

また、最終的な交渉の場では、相手方が弁護士を立ててくるケースも当然想定しなければなりません。

相手方の弁護士は、あくまで依頼者の目的を達成する為に働きます。中には倫理観を無視した主張を繰り返すケースもあります。

そんな時、本当に自分自身だけで戦い抜くことが出来るでしょうか。

今後の一生に関わる問題だからこそ、プロの力を出来る限り頼りましょう。

最も大事なのは冷静になること

親権問題に限らず、夫婦間の離婚調停・裁判では、当事者は非常に感情的になりがちです。

相手が不貞行為をしていた場合は尚更で、そういった感情は理解できますが、「親権を取る」という最終目的の為には時に自分の感情を押し殺してでも冷静に振る舞う必要があることは覚えておきましょう。

浮気調査も親権獲得に有利になることも

一見、親権獲得とは無関係な不貞行為(不倫)に関する出来事ですが、浮気調査の中で親権獲得に有利になる材料が出てくる事もあります。

  • 配偶者が家庭を顧みなかった事実を証明できる
  • 配偶者が育児をしなかった時間を証明できる
  • 音声データなどで子どもに関する不誠実な発言を得られることがある
  • 音声データなどで調停・裁判時に相手方が出してきた資料のウソをあばくことができる
  • 不倫相手が、連れ子に対してヒドイ言動をした場合も有利な証拠になる

浮気をしている人は、男性・女性ともに熱病にかかったかのように、周囲が見えなくなることがあります。その中で、不用意な発言を拾えれば儲けものでしょう。

また、探偵社が浮気調査終了後にまとめる報告書は、浮気をした配偶者や浮気相手の重要な行動記録となり、それによって相手方の主張がウソであったり、不適当であるとみなされることもあります。

もしも子どもがいるご家庭で、配偶者の不倫に悩んでいる方は、不貞行為の慰謝料請求や浮気相手への制といった直接的な事柄だけでなく、子どもとの将来を見据える上でも、浮気調査はなるべく早く行うべきと言えるでしょう。

不貞行為と親権の関係まとめ

不貞行為はあくまでも夫婦間の問題であって、親権とは原則として関係ありません。

しかしながら、不貞行為によって家庭環境を壊すような人が、今後子どもの生育にとって果たして相応しい人間なのかと言われればそれはNOと言いたいのが浮気をされた側の心情です。

だからこそ、冷静に、必要なことを着々と準備していかなければなりません。

自身の為に、そして子どもの為に、より良い未来を掴むため、あらゆる手段を尽くして欲しいと思います。

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