遠距離調停の管轄合意や移送申立とは?

通常、離婚や財産分与などの民事調停などは、相手方の所在地(住民票の住所ではない)を管轄する家庭裁判所(簡易裁判所)で行うのが原則です。

しかし、すでに夫婦間が別居している場合、遠方となると容易に相手方の管轄である家庭裁判所に出向く事が出来ないケースもあります。

そこで、ここでは、所在地とは別の家庭裁判所、申立人である自分から近い家庭裁判所で調停を行う方法について解説します。

管轄を変える方法は二つ

調停を行う家庭裁判所を変更する方法は以下の二つです。

  • 双方合意の上で、管轄合意書を提出する
  • 自庁処理上申書を提出する

管轄合意書とは

管轄合意書とは、双方が管轄外の裁判所で調停を行う事の合意を示す為の書類です。調停の申し立ての際に同時に提出します。

管轄合意書は、下記の裁判所の書式をダウンロードし、署名・捺印を行って下さい。

管轄合意書

引用:裁判所

但し、そもそも調停を行う間柄には、すでに何らかの紛争が発生しており、どの家庭裁判所で調停を行うかという点においても、管轄合意を得られるケースが少ないのが実情です。

尚、当然の事ですが、本来合意を得られていないのに、勝手に管轄合意書に署名・捺印し、提出した場合は、私文書偽造の罪に問われ調停どころではなくなりますので、絶対に止めて下さい。

すでに申し立てをした後に場所を変えたい場合

すでに調停の申し立てを行った後に、調停を行う場所を変更したい場合には、以下の2パターンがあります。

  1. 一旦調停申し立てを取り下げてから、管轄合意書と同時に他の家庭裁判所へ申し立てを改めて行う
  2. 移送申し立てを行う

ただ、移送も調停とは別の一つの裁判となり、非常に時間がかかる為、現実的には1番の取り下げ⇒再度希望する家庭裁判所へ管轄合意書と共に申し立て、という形がスムーズです。

自庁処理上申書とは

自庁処理上申書とは、申立人が都合の良い家庭裁判所で調停が開かれるよう、裁判所へお願いするものです。必ずしも上申が認められるわけではなく、裁判所が判断する形になります。

また、自庁処理上申書で申し立てを行った場合には、相手方にも必ず事情を聴き取り、相手方には自分の管轄内で調停をするよう申し立てをする移送申し立ての機会が与えられます。

自庁処理上申書は下記からダウンロードできます。

自庁処理上申書

引用:裁判所

自庁処理が通るには相当な理由が必要

自庁処理は、あくまでも裁判所へのお願いであって確実に認められるものではありません。また、自庁処理が確実に認められるという法律的な基準もありません。あくまでも個々の事情を裁判所が判断し、裁判所の裁量で決定されます。

では、自庁処理が認められる理由にはどういったものがあるでしょうか。

  • 子供が幼くて預けられない
  • 金銭的に困窮していて遠方への旅費・交通費が捻出できない
  • 心身の病気・怪我で移動が困難
  • 重篤な親の介護などで自分の住所地を離れられない
  • DV等を受けた過去があり、相手方の住所地へ行くことに精神的な負担が著しい
  • 当事者の交通の便や経済力が極端に異なる
  • 調停や審判(裁判)時に聴き取りの可能性がある関係者の多くが自庁内に住んでいる

調停の内容にもよるのですが、上記のようにどうしても相手方の家庭裁判所へ行くことが難しいようなケースでなければ、自庁処理は認められないでしょう。

また、自庁処理は申立人が任意で提出するもので、それが無条件に認められてしまえば相手方に一方的な不利益となる為、相手方に裁判所が聴き取りを行う機会が必ず設けられます。

その際、相手方がこちらの希望する裁判所での調停を拒めば、移送申し立てをし、そこで再び一つの裁判となります。

基本は相手方との合意ありき

管轄合意、自庁処理はいずれも相手方との合意があって、成立するケースが多く、自分の都合で一方的に推し進めてしまえば、より一層相手の反感を買いますし、本来の係争である調停内容を争う上でも賢い方法とは言えません。

また、自庁処理や移送は別の裁判であることからも、非常に時間がかかります。

基本は、相手方と上手に交渉し、双方が納得のいく形で調停を行う形が望ましいでしょう。

管轄合意のやり取りも調停に影響??

ここからはあくまで実体験に基づく私見です。

私が実際に調停を行った際、大阪と東京という遠距離であったため、私も大阪もしくは中間地点での管轄合意を相手方に求めました。

しかし、相手方はその連絡を完全に無視しました。

その事を調停の場で調停員に伝える時間がありましたが

「わざわざ大阪から大変でしたね。」

という労いの言葉がありました。

管轄合意の一件に限らず、争いごととなっている中で、如何に冷静に交渉をしたかどうかというのは、後々調停員に見られる可能性があります。

調停員は、決して片方の味方になるわけではありませんが、人間である以上、双方の人間性は必ず見ており、それによって調停員からのアドバイスなども変わります。

自分が管轄合意をお願いする側、お願いされる側、どちらであっても、理性的に行動しなければ、後々付きこまれるスキになり、調停の内容に影響を与える事は十分に考えられます。

もしも、相手方の振る舞いがヒドイものであれば、管轄合意のやり取りもしっかりと記録に残しておきましょう。

そういった意味でも、管轄合意に関する交渉は、口頭ではなく、電話なら録音、メールやLINEなどで記録を残す、といった形を心掛けましょう。

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