パートナーの浮気が発覚した時、離婚をするか、復縁をするか、悩みは人それぞれです。一方、パートナーや浮気相手に何らかの制裁を与えなければ気が済まないという方も多いでしょう。
そんな時、認められている制裁の一つが慰謝料請求です。慰謝料は、浮気をしたパートナー・浮気相手の両方に請求できるものです。
ただし、慰謝料請求は交渉事です。裁判は最終手段であって、民事である事から必ずしも強制力を持って相手に支払わせることが出来るわけではありません。
裁判まで行く前に決着するに越したことはありませんが、もしも裁判となれば素人が一人で戦うのは難しく、弁護士の力が必要となるでしょう。
では、もしも弁護士に依頼した場合の費用はいくらかかるのでしょうか?上手に慰謝料を請求する為にはどうすればいいのか、その方法と合わせて解説していきます。
不倫問題を弁護士に依頼した場合の費用・相場
- 事前相談は1時間5,000円が相場
- 着手金として20~30万円
- 成功報酬が獲得した慰謝料の10~20%
一般的に不倫・浮気の問題について弁護士に解決を依頼した場合、かかる費用の総額は上記の通りです。
内容が複雑であれば相談にも時間はかかりますし、慰謝料が高額であればあるほど、最終的に支払う金額は多くなります。
不倫の慰謝料相場
まず、不倫の慰謝料は以下が相場となっています。
- 不貞行為の慰謝料は100~300万円
- DVやモラハラなど他の慰謝料と合算のケースでも最大500万円程度
基本となる慰謝料相場は上記の通りで、不貞行為についてはその頻度や期間、実生活への影響等、様々な要素が加味されて決められます。
また、慰謝料は不貞行為に限ったものではありませんので、不貞行為以外にもDVを始めとする慰謝料案件がある場合、合算して請求することが可能です。ただし、その場合でもMAXで500万円程度が過去の判例や一般的な相場です。
確実に慰謝料を取れる状況ならば弁護士費用はペイできる
前述の通り、弁護士にかかる費用よりは、獲得できる慰謝料の方が多い為、確実に慰謝料をもらえる状況であれば弁護士費用は十分にペイできます。
また、確実に勝つ為にも弁護士を利用した方が良いと言えます。
ただし、弁護士費用は、基本的に着手金を前払いしなければならないケースがほとんどで、浮気調査も合わせたら経済面で厳しいと言う方もいます。
そのような場合には、後払い制・成功報酬型の支払い方法を採用している弁護士を探しましょう。
弁護士に依頼する前のチェックポイント
慰謝料請求は、調停までは交渉事、裁判では係争であって、相手方が慰謝料の支払い拒否、減額を主張するケースは多々あります。
まずは、慰謝料を確実に取れるケースとはどういう場合か、依頼前に確認しておきましょう。
1.不貞行為の物的証拠がある
証拠品 | 証拠としての強さ | 補足 |
---|---|---|
ラブホテルの出入り写真・動画 | 〇 | 動画だとより強い。顔が鮮明に分かる事が条件 複数回必要 |
裸体で抱き合う写真・動画 | 〇 | 動画だとより強い。顔が鮮明に分かる事が条件 |
本人が浮気を認めた音声データ | 〇 | 本人(浮気相手)の証言と明確に分かる内容である事が重要 |
自宅の出入り写真・動画 | △ | 単体では弱い。複数回かつ仕事の業務上、不要な宿泊であることが条件 |
キスの写真・動画 | △ | 単体では弱いが、その他と複合させることで有力な証拠に |
抱き合う写真・動画(衣服着用) | △ | 単体では弱いが、その他と複合させることで証拠の補足に |
ラブホテルのレシート・領収証 | △ | 単体では弱いが、その他と複合させることで有力な証拠に |
ラブホテルのクレジットカード利用明細 | △ | 単体では弱いが、その他と複合させることで有力な証拠に |
LINE・メール等の文面 | △ | 不貞行為があった事を強く示す内容であることが必要 |
外出先で食事をしている写真・動画 | × | 単体では証拠にならない |
電話の通話履歴 | × | 単体では証拠にならない |
上記は裁判を見据えた上で、どれが証拠となり得るかを示したものです。LINEやメールのテキストだけでは弱く、写真・動画もシチュエーションによっては単体では確実に裁判で勝てるとは言い切れない物も多々あります。
司法判断の原則は、疑わしきは罰せずです。どんなに実情を訴えても、裁判となれば確実な証拠が必要ですので、弁護士に依頼する前に証拠の有無は必ず確認しておきましょう。
2.浮気相手の情報を把握している
自分のパートナーの基本的な情報を持っていない方はまずいないかと思いますが、浮気相手となるとそうはいきません。
- 名前
- 顔写真
- 住所
- 電話番号
- 職業(勤め先)
- 資産状況
上記について、出来る限り把握しておく事が望ましいです。探偵へ浮気調査を依頼する際には、上記もしっかり調べてもらいましょう。
詳細は後述しますが、浮気相手に慰謝料請求をする場合には、勤め先も必ず把握しておきましょう。これを知っているか知らないかで後々の交渉や最終的な強制執行に大きな影響を及ぼします。
3.慰謝料の請求相手に資産がある
浮気をしたパートナー、浮気相手、いずれも慰謝料請求が認められたところで無い袖は振れません。
慰謝料は、相手の生活費が無くなるレベルまで強制的に取れるものではなく、現預金が無い・仕事をしておらず収入が無い(少ない)といった場合、現実的には慰謝料を取る事が難しくなります。
4.自分に確固たる意志(目的)がある
浮気相手はともかく、パートナーと争う事は心情的に非常にツライことです。
離婚の意思が固ければ問題ありませんが、復縁したい気持ちが残っているのならば、慰謝料を請求する事が必ずしもあなたにとってベストな選択かどうかは分かりません。
浮気調査をする上でも、弁護士に依頼する上でも、あなた自身の意思・目的が定まっていなければ依頼する意味がありません。
人生を左右する決断だけに、しっかりと自分の中で気持ちの整理をし、明確な目的と意思を固めてから依頼すべきです。
弁護士に依頼せず上手に慰謝料を獲得する方法
不倫の慰謝料請求は、必ずしも弁護士に依頼しなければならないわけではありません。
ここでは、弁護士に依頼せず、自分で交渉を行う為に必要なポイントを解説します。
1.法テラスなどの無料相談は出来る限り活用しよう
法テラスに限らず、不貞行為に関する慰謝料について、無料で相談できる場所はあります。
弁護士事務所でも、初回相談は無料だったり、正式依頼にならなければ相談料は取らないところもありますので、実際に慰謝料請求の交渉をスタートする前に、一度無料相談を活用しましょう。
自身の勝算や交渉の進め方などについて、客観的なアドバイスを一度受けておくのは、自分が冷静になる為にも必要な事です。
2.調停までは一人でも戦える
慰謝料請求は以下の流れで進みます。
- 当事者同士の交渉・話し合い
- 交渉が決裂した場合は調停を申し立てる
- 調停も成立しなければ審判(裁判)へ移行
この内、2までは当事者同士もしくは調停員を挟んでの話し合いです。そこまでに難しい手続きは無く、個人でも十分戦う事が出来る事から、弁護士への依頼は3の裁判になった時に初めて依頼する形でも問題はありません。
但し、心情面や仕事や育児の兼ね合いなどから時間的に厳しいというケースでは、始めから弁護士に依頼するのが最も簡単です。
もしも、個人で戦う覚悟があるという方は下記記事を参考にしてみて下さい。

3.証拠と根回しを固める
不倫は、中途半端な証拠しかなければ、相手は決してそれを認めません。必ず、不貞行為があったと相手が認める証拠を固めてから交渉をスタートしましょう。
また、交渉を行う前に周囲への根回しも大切です。
第三者の証言があれば、その人には前もって戦う事を伝えておき味方になってもらう必要がありますし、義両親が誠実な方であれば、不貞行為をしたパートナーを共に咎め、慰謝料を肩代わりしてくれる可能性もあります。
また、特に浮気相手に関しては、逃げられないよう確実な連絡先(勤務先など)を確保した上で、交渉を始めましょう。
4.法外な金額を請求しない
不貞行為に限らず、慰謝料の金額は一般的な相場がある程度決まっています。勿論、双方の合意があれば、金額の制限はありませんので、高額の慰謝料を得られる可能性はあります。
但し、法外な慰謝料を吹っ掛ければ当然相手は拒否し、交渉がこじれます。
よく、交渉事のコツとして、予め高額を提示して相手が折れる事を前提に話を進めた方が有利、と言われる事がありますが、それは間違いです。
これは実際に弁護士から聞いた話でもありますが
「あまりに法外な要求をすることは、交渉が拗れるだけでなく後々の裁判でもこちらが不利になる」
との事です。実際、民法にも以下のように規定があります。
引用:日本民法第1条2項
権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
慰謝料請求は民事であり、法外な要求を突き付けることは、上記の信義・誠実さに反するとして、請求している側が不利になるのです。
あくまでも、状況に応じて適切な要求をしなければなりません。
5.交渉記録を必ず残す
慰謝料請求をするにあたって、相手方との交渉の手段は、書面、メール、ライン、電話などがありますが、どの形を取るにせよ、全ての記録を残すのが大切です。
決して口頭だけで行ってはいけません。口頭の場合は、スマホやICレコーダーを使い、必ず録音・録画をしましょう。
それらは全て、後々の調停・裁判の場で証拠となり、自分を勝利に導く武器となります。
6.交渉を始めるのは準備が全て整ってから
不貞行為・不倫は、それを見つけた自分自身が激高したり感情的になりやすい案件です。
ですが、準備不足なまま感情的に動いてしまえば、結果的に自分が損をすることになります。
- 証拠がないのに調停を起こしてしまう
- 確実な連絡先を知らないまま口頭で慰謝料の話をしてしまう
- 職場に怒鳴り込む(名誉棄損)
- 相手を脅迫・恫喝する(脅迫罪)
- 確実に支払わせる方法を取らず、中途半端な合意をしてしまう
上記のような行動を取れば、それらすべてが後々自分の不利となってしまいます。
慰謝料請求は、連絡は勿論、最終的な支払いまで相手が逃げられないよう、下準備をした上で交渉をスタートしなければなりません。
7.ベストな交渉の流れ
- まずはしっかりと証拠を固める
- 相手が逃げられないよう職場等の確実な連絡先を確保しておく
- 義両親や知人等の周囲を予め味方につけておく
- その上で交渉をスタートし、記録は全て残す
- 交渉はあくまでも冷静に・誠実に行う
- 合意が取れれば、強制執行が可能な書面を必ず残す
上記のように進めていくべきです。ポイントは、十分な下準備であり、最後の支払いまで逃さない事です。
最後の合意で注意すべきこと
最終的に相手方が慰謝料の支払いに応じた際、確実に支払わせる為には、相手の支払いが滞った際に裁判所へ強制執行を申し立てられる書面を残さなければなりません。
強制執行が可能となる書面は以下の通りです。
- 調停調書……調停を経て必ず作られる書面
- 審判所・判決書……裁判を経て必ず作られる書面
- 強制執行が可能な公正証書
この中で勘違いしがちなのが公正証書です。
調停まで行かず、双方の協議で慰謝料の合意が取れた場合に、公正証書を作れば大丈夫と思っている方もいるかと思いますが、公正証書は必ずしも強制執行の申し立てが出来るわけではありません。
強制執行が確実に履行される為には、必要要件を満たしていなければならないのですが、公正証書の文面が一つ曖昧なだけでも、裁判所が強制執行を許可しないケースもあります。
双方の協議で合意が決まった際には、行政書士や弁護士などに、確実に強制執行が行える形での公正証書作成を依頼し、公証役場の公証人に任せてはいけない、という事は覚えておきましょう。
不倫の慰謝料と弁護士費用まとめ
不貞行為に関して慰謝料請求する場合には、出来る限り弁護士の協力を仰いだ方が良いです。
確実に勝つ為は勿論、その為に必要な行動についてのアドバイスももらえますし、心理面でも支えとなってくれます。
ただ、費用をかけられるかどうかは人それぞれで状況によります。
不貞行為に伴う戦いは大変ツライことですが、だからこそあなた自身がより良い未来を掴む為にはどうすれば良いのか、正しい知識を持って、冷静に対処していきましょう。
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